監督廣木隆一。
震災後、デリヘル嬢となり、福島と東京を
行き来する公務員の主人公。
妻も仕事も失い、酒におぼれるその父。
原発作業員の夫と精神が壊れてしまった妻。
地域の復興に奔走する公務員と新興宗教に溺れるその家族。
なにも特別なことが起きるわけではない、
今を生きる、福島のごく普通の人びとを淡々と描く。
あの日の後、家族を失い、住処を失い、仕事を失い、心を失い…
すべてが変わってしまった。
変わってしまったことを受け入れられないのに、
ただただ日常を受け入れるしかない人々。
叫ぶことさえできない人々。
忘れようとしても忘れられない記憶が人々の心を揺さぶる。
静かな場面にも、その心の叫びが聞こえるようだ。
誰にでも起きうることだった。
誰にもかけがえのない日々があったのだ。
京都で観た3本のうちの一つ。
心に残る映画だった。